平家住宅のメリット・デメリット

目次

2階建て・3階建て住宅が多い中、1階建ての平家住宅のメリットデメリットを考えていきましょう。

平家住宅のメリット

・圧倒的なバリアフリー

第一に「平家住宅=バリアフリー」ということが挙げられます。2階建て、3階建て住宅では階段での移動が必須になります。
階段での昇降は、どうしても高齢者や障碍者にとっては、日々のQuality of Life(QOL : 生活の質)を下げてしまいがちになってしまいます。

そして、また階段での移動による事故のリスクが高くなります。階段での事故のリスクは何も高齢者や障碍者、幼児だけではなく、バリバリ動き盛りの20代、30代の人にとってもあり得る話です。ダイヤモンドオンラインの2016年の国内の死因を分析した記事によると・・・

不慮の事故の要因は、大きく次の4つに分けられる。窒息9485人、転倒や転落が8030人、溺死7705人、交通事故5278人だ。さらに細かく個別の要因を見ていくと、「スリップ、つまづき及びよろめきによる同一平面上での転倒」が5788人で最多。要するに「つまずいて転んで打ち所が悪く…」という死因が不幸な事故のトップで、その数は交通事故よりも多い。

 同一平面ではない階段などからの転落は別で、695人、はしごからの転落は200人、樹木からの転落というものも28人を数える。氷及び雪による同一平面上での転倒、つまり「冬の路面で滑って転んで打ち所が悪く」という死因は6人と、意外に少ない。

なんと2016年の1年で階段転落での死者が695人も居たというのです。
そして「同一平面上での転倒」による死因が、5788人というもの驚きだが、逆に「氷や雪による冬の路面での転倒」による死因は6人と少ないというもの驚きです。

Point

転倒での死者
同一平面上での転倒 5788人
階段での転倒 695人
氷や雪の路面での転倒 6人

この3つの数字の差異は2つの要因が推測できます。

1つは「機会の差」
氷や雪の路面の転倒はそもそも冬しか起こらない機会であり、地域によっては遭遇機会がゼロの場合もありえます。
仮にある人が年間100万歩あるいたとするとその内訳の97%以上が「同一平面上」であり、階段は1-2%。氷や雪の路面は1%以下なのではないでしょうか?

そしてもう1つは「危険な場面ほど慎重になる」ということです。

極端な可能性であるが、登山で急斜面の下る場合は、「踏み外せば、大怪我、最悪死ぬ」と無意識に頭の中にあるわけです。
この場合は、一歩一歩、足場を確保し、手もどこかに掴まりつつ、慎重に下りていくのです。
階段も同様に、無意識的に「落ちたらどうなるのか?」を考え慎重になるのです。

この2つの側面から、この数字の開きというのが説明できます。

では、この場合の、同一平面上の転倒による死因の5788人に比べると、階段の700人というのは、取るに足らない数字なのか?
というと決してそうではなく、年間700人の死因の可能性を、少なくとも家庭内で排除できる意義は大きいと思います。

そして何より、階段が無いことによる「QOLの向上」は間違いなく意義があるのです。

・日々の生活の動線設計がしやすい。

例えば狭小住宅は1Fを玄関&ガレージのみにし、2FにLDKがあるのはよくある間取りです。その場合は、買い物から帰宅し大きな荷物を冷蔵庫へ運ぶには階段を通り2Fに上がらねばなりません。3Fに寝室があり、ふとした場合に飲み物が欲しかったり・・・、小腹が空いたり・・・という場合もわざわざ2Fの冷蔵庫まで降りていかねばならなかったったりします。また1Fに浴室がある3F建狭小住宅の場合は、浴室の付近に洗濯機があり、それを干すために3Fや屋上まで運んで・・・と日々の家事の動線が複雑になりがちです。
こういうケースに対して、平家住宅の場合は快適に生活するための動線設計がしやすい。ということもメリットの一つです。

・広大な屋根を使って創エネルギーが容易

国の方針で、今後の新築住宅はZEHに則した住宅を推奨していくのですが、ZEH住宅という言葉を聞いたことはありますか?
ゼロ・エネルギー・ハウスの略で、家庭で創出するエネルギーを大きくし、家庭で消費するエネルギーが小さくする。というものです。

要は「創るエネルギー >= 使うエネルギー」です。

これをZEH住宅といいます。ZEH住宅として認定されると補助金も出るのです。

では、家庭でエネルギーを作るにはどうすれば良いのでしょう?

代表的な方法は古くからある太陽光発電ですね。

太陽光発電はソーラーパネルを使い、太陽の無限のエネルギーを人間が利用できる電気エネルギーに変換するわけだが、
多くの場合は屋根にソーラパネルを敷き詰める方法でしょう。

家庭内で太陽光発電をする場合は、ソーラーパネルが多ければ多いほどたくさんのエネルギーを創出することができます。
ソーラーパネルを増やすには、屋根が広ければ広いほどいいというわけです。

なので平家住宅のメリットとして、自家発電しやすく、家計の足しにもできるというのもメリットの一つです。

プライベートな庭が持てる

平家住宅事例を見ていると、コの字型や、ロの字型の平家住宅を見かけます。狭小住宅は敷地一杯に建物エリアを取らないといけないのに対して、
平家住宅は柔軟に建物エリアを設計することができます。更に上階がないことにより、屋根に関しても自由度が高いといえるでしょう。

そこで通常の庭とは別に、建物自体をコの字やロの字にすることで、外界からは遮断されたプライベートな庭を持つことができます。

気候がいい時期の夕涼みやお風呂上りなどに、ラフな格好で外気に接することができる内庭は魅力的です。

平家住宅のデメリット

では、次に平家住宅のデメリットを見ていきましょう。

・広い土地が必要

2階建、3階建と異なり、理想的な広さを実現するためにはその分、敷地を確保せねばならないので、土地代がかかります。
その土地のエリアによっては、地価がとんでもなく高い場合があります。

自身の収入状況にもよりますが、なかなか都心・都市部で広い土地を確保するのは難しいのではないでしょうか?

・陽当たりが悪くなる場合も

周りの建物によっては、陽当たりが悪くなる場合も懸念されます。
それも家を建てる時に周りの建築物はわかるし、都市部でなければ、ある日突然ビルが建つという可能性も非常に低いでしょう。

・水害に弱い

最近は、ゲリラ豪雨という言葉が誕生したり、九州は50年に1度の大雨が毎年のように降り、埼玉や長野では川が氾濫。
そして東日本大震災時もほとんど被害はなかったと言え、災害には無縁とも言えた千葉県でも2019年秋の台風で未曾有の被害が出たり、最近は雨による水害が非常に多いです。
2階建、3階建てならば、洪水の際に避難が遅れたとしても、上階に避難という対応が取れますが、平屋建てだとそれができないので、その部分は大きなデメリットと言えるでしょう。3.11の際も地震そのものに建物倒壊よりも、その直後の津波による被害の方が甚大であったのは記憶に新しいのではないでしょうか。
ただし、この懸念も建てる際にその地域の気候や海や川からどれぐらい離れているか?ということを調べて、問題なさそうということであれば、デメリットにはならないでしょう。